私のSFの原点は、不思議な映画「2001年宇宙の旅」
私にとってのSFの原点は「2001年宇宙の旅」でした。アーサ・C・クラークの原作をスタンリー・キューブリック監督が映像化したこの映画をきっかけに私は、謎に満ちた宇宙の壮大さを想像し、畏怖の念と憧れがまじったような感覚を覚え、それ以降様々なSF映画を観るようになりました。いつか宇宙旅行に行ってみたいというような漠然とした思いも抱いたものです。
【目次】
不思議な感覚に魅せられて
小説を読んでいないこともありこの映画は基本的に難解で、モノリスとかボーマン船長の時空を超えた転生シーン(?)とか、正直意味がよくわからない場面も多々ありました。それでも何か不思議な感覚に魅せられて、録画した「2001年」を何度も何度も繰り返し見たものです。
この映画に惹かれた理由のひとつには、全編でふんだんに使われているクラシック音楽の影響も多々あったように思います。
冒頭や最後の「ツァラトゥストラはかく語りき」や、宇宙船内シーンで流れる「美しき青きドナウ」など何だか映像にとてもマッチしていて、今でもこれらの音楽が流れてくると、原始の猿人が放り投げた骨が宇宙衛星に変わるシーンや、ゆっくり動いている宇宙船の映像が脳裏に浮かんできます。これらの音楽がメジャーになったのはこの映画の影響も大きいのではないでしょうか。
ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」による、世の中の全ては同じことの繰り返しであるという「永劫回帰」の思想のごとく、この宇宙に生命が誕生し進化し滅びていく繰り返しみたいなことを映画でも示唆しているのだとしたら、映画音楽として深い選択だなと、ずっとのちに思いました。
AI「HAL9000」が現実になる日
木星探査宇宙船ディスカバリー号に搭載された、船の制御から生活まで全てを担う高度なAIコンピュータ「HAL9000」も、AIがまだまだ未来のものであった当時には夢物語のようで、それが人間の命に背き反乱するようになっていく様にはゾッとしたものです。
ちなみにHAL9000の"HAL"は、当時最高峰のコンピューター企業「IBM」のアルファベットを1文字ずつ前にずらしたもので、"IBMの一歩先を行く"という意味を込めている、なんて話がよく聞かれましたね。
2022年現在、どんどんAI技術は進化しており、そう遠くない将来人間は普通にAIロボットと暮らしていくことになるでしょう。人間の脳と同レベルのAIが誕生する特異点"シンギュラリティ"がもうあと10数年程度でやってくるとの予測もされています。
現実がSFを超える日もそう遠くないのかもしれません。
「人に危害を加えてはならない・人の命令に従わなければならない・自己を守らなければならない」という、アシモフのロボット工学三原則を、今、世界中の政治で真剣に話し合っておかなければならない時代に突入しているように感じています。
私にとってSFは近い未来の姿
続編の「2010年」では、木星の衛星エウロパには原始的な生命が生息しており、命の進化を見守るため着陸してはいけないことを何かから告げられるのですが、現実でもエウロパに水が存在する可能性を示唆する研究(生命の誕生の可能性につながる)が発表されたりして、その都度この映画のことを想起していました。
つい2か月前にもこんな記事が載っていました。
私にとってSFは近い未来の姿でもあります。信じられないようなすばらしい光景を見たいから、少しでも長生きしたいと本気で思っているのです。